重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

読書メモ

【再掲】読書メモ:ニタ・ファラハニー『ニューロテクノロジー:脳の監視・操作と人類の未来』

ニューロテクノロジー: 脳の監視・操作と人類の未来 作者:ニタ・A・ファラハニー 河出書房新社 Amazon ニタ・ファラハニーの”The Battle for Your Brain”の邦訳が出版されたので、原著の感想文を再掲します。小見出しや引用の翻訳は、邦訳書のものではないの…

読書メモ:『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(阿部幸大 著)

まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書 作者:阿部 幸大 光文社 Amazon 『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』を読んだ。読む前と後で行動様式が変わるような本に出会えることは多くないが、これはそうした一冊になりそうだ。本…

読書メモ:『エッセンシャルワーカー:社会に不可欠な仕事なのに、なぜ安く使われるのか』(田中洋子 編著)

エッセンシャルワーカー 社会に不可欠な仕事なのに、なぜ安く使われるのか 旬報社 Amazon 本書は、日本のエッセンシャルワーカー、つまり「社会に不可欠な仕事をしている人たち」に焦点を当て、その処遇が悪化してきた実態とその背景を、10を超える業種のケ…

読書メモ:The Worlds I See (by Fei-Fei Li) 米国アカデミア屈指のAI研究者の半生

The Worlds I See: Curiosity, Exploration, and Discovery at the Dawn of AI (English Edition) 作者:Li, Fei-Fei Flatiron Books: A Moment of Lift Book Amazon 近年の人工知能分野を牽引している研究者と言えばOpenAIやAnthropicなどのスタートアップ、…

読書メモ:『励起(上・下)』(伊藤憲二 著)――今読まれるべき1000ページの「科学史的伝記」

励起 上――仁科芳雄と日本の現代物理学 作者:伊藤憲二 みすず書房 Amazon 励起 下――仁科芳雄と日本の現代物理学 作者:伊藤憲二 みすず書房 Amazon 日本の物理学者、仁科芳雄(1890~1951年)の伝記である。 上下巻、2段組ハードカバーで合計1000ページ*1に迫…

読書メモ:Nita Farahany ”The Battle for Our Brain” …ニューロテクノロジーの時代に守るべき「自由」とは

The Battle for Your Brain: Defending the Right to Think Freely in the Age of Neurotechnology (English Edition) 作者:Farahany, Nita A. St. Martin's Press Amazon 脳から情報をとる、脳に直接働きかける。5年前なら「未来の話」だったであろうニュー…

読後感メモ:『惑う星』(リチャード・パワーズ 著)

惑う星 作者:リチャード・パワーズ 新潮社 Amazon Twitterに書く程度の感想になるが、ネタバレを含むかもしれないのでここに置いておく。 Richard Powersの『惑う星』、倫理的障壁のようなものを感じて躊躇していたが、予想より自分にとってrelatableな内容…

読書メモ:世界は時間でできている(平井靖史 著)

世界は時間でできている──ベルクソン時間哲学入門 作者:平井 靖史 青土社 Amazon 本書は、19~20世紀に活躍したフランスの哲学者アンリ・ベルクソンの時間哲学の全貌を、長年ベルクソン哲学の勢力的な研究を続け、日本だけでなく世界的な研究コミュニティづ…

読書メモ:精神を切る手術(橳島次郎 著)

精神を切る手術――脳に分け入る科学の歴史 作者:ぬで島 次郎 岩波書店 Amazon 生命倫理や科学政策を専門する著者による、2012年の単著。脳神経倫理では繰り返し言及される文献であり、いつか読まねばと思っていた。残念ながら絶版となっているのだが、今回意…

読書メモ:イノベーション概念の現代史(ブノア・ゴダン 著、松浦俊輔 訳、隠岐さや香 解説)

イノベーション概念の現代史 作者:ブノワ・ゴダン 名古屋大学出版会 Amazon 「イノベーション」という言葉を聞くと、少し身構える――そんな人は多いのではないだろうか。私もその一人。日常会話で使いにくい言葉だと思う。ある事業なり活動なりが「イノベーシ…

読書メモ:Innovation in Real Places (Dan Breznitz著)…地域を壊さないイノベーションのために

今日の科学技術は、「イノベーション」と切り離せなくなっている。 「イノベーション」とは、技術や知識、アイディアの新しい組み合わせによって、経済活動の前提に変化をもたらすこと。資本主義社会にとって、継続的なイノベーションは必要条件なだけでなく…

読書メモ:学術出版の来た道(有田正規 著)

学術出版の来た道 (岩波科学ライブラリー 307) 作者:有田 正規 岩波書店 Amazon 何気なく手に取ったこの本、非常に面白く、ためになる内容だった。タイトルに「学術出版」とあるが、「学術書」というよりは「学術誌」(いわゆる「ジャーナル」)が主題だ。 …

読書メモ:『テクノロジーとイノベーション』(W・ブライアン・アーサー著)

テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論 作者:W・ブライアン・アーサー みすず書房 Amazon 長年サンタフェ研究所に籍を置き、「複雑系経済学」の牽引者として知られるW・ブライアン・アーサー氏による著作。原書が2009年、翻訳が2011年に出ている…

読書メモ:不定性からみた科学(吉澤剛)…科学の「暗さ」を見つめ、科学を語り合う

不定性からみた科学―開かれた研究・組織・社会のために― 作者:吉澤 剛 名古屋大学出版会 Amazon 科学の語りがたさを語る教科書 科学とは何か。科学で何がわかるのか。自分たちにどんな恩恵があるのか。どうやって推進すべきなのか。誰が責任をもつのか。大…

読書メモ:記憶と人文学(三村尚央)…記憶の何が私/私たちにとって切実なのか

記憶と人文学: 忘却から身体・場所・もの語り、そして再構築へ 作者:三村尚央 小鳥遊書房 Amazon 実家にいたころ、私の母は、毎日欠かさず一行日記をつけていた。それが全部手元にあるので、「何年の何月何日は〇〇していたよ」などと瞬時に調べてみせるのだ…

読書メモ:Atlas of AI(Kate Crawford 著)...AI産業のもう一つの姿

Atlas of AI: Power, Politics, and the Planetary Costs of Artificial Intelligence 作者:Crawford, Kate 発売日: 2021/04/06 メディア: ハードカバー AI(人工知能)は福音か、脅威か。 どうすれば、私たちはAIとよりよく付き合っていけるのか。 そうした…

読書メモ:計算する生命(森田真生 著)

計算する生命 作者:森田 真生 発売日: 2021/04/15 メディア: 単行本 『数学する身体』*1から5年、森田真生さんの新刊『計算する生命』。著者の書くものに触発され続けてきた一人として、固唾を呑んで発行を待っていた。 「すがすがしさ」と、難しさ 期待にた…

【再掲】読書メモ:マスターアルゴリズム(ペドロ・ドミンゴス)

マスターアルゴリズム 世界を再構築する「究極の機械学習」 作者:ペドロ・ドミンゴス 発売日: 2021/04/22 メディア: Kindle版 原書の発行から5年半。『The Master Algorithm』の待望の翻訳が出ました。まさかの縦書き。機械学習の入門書として、強くお勧めで…

【再掲】読書メモ:数学に魅せられて、科学を見失う(サビーネ・ホッセンフェルダー)

数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠 作者:ザビーネ・ホッセンフェルダー 発売日: 2021/04/09 メディア: Kindle版 ”Lost in Math"の待望の翻訳。原書の読書メモを再掲します。Sabine Hossenfelder氏は、物理学者にして科学ライター。中…

読書メモ:The Science of Science (Dashun Wang, Albert-László Barabási) …「科学的生産性の科学」の到達地点

The Science of Science 作者:Wang, Dashun,Barabási, Albert-László 発売日: 2021/03/25 メディア: ハードカバー ネットワーク科学の第一人者として知られるラズロ・バラバシと、組織論を研究するDashun Wangによる共著書。タイトルのScience of Science(…

読書メモ:科学とはなにか(佐倉統 著)…科学技術を「生態系」として語る

科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点 (ブルーバックス) 作者:佐倉 統 発売日: 2020/12/17 メディア: 新書 2020年はとくに「科学とはなにか?」を考えたくなる一年だった。 感染症対策で専門家会議や分科会が組織され、連日テレビには様々な科…

読書メモ:統計学を哲学する(大塚淳 著)

統計学を哲学する 作者:大塚 淳 発売日: 2020/10/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) 発売後すぐに入手し、夢中になって読んだ『統計学を哲学する』。とても大事な本だと感じ、Twitterで次のような(押しつけがましい)投稿もした。 大げさに聞こえるかも…

読書メモ:記憶のデザイン(山本貴光)

記憶のデザイン (筑摩選書) 作者: 山本貴光, 発売日: 2020/10/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) 自分の記憶、大丈夫か? と、時々不安になる。人やものの名前が思い出せなかったり、漢字が書けなかったり、というのは前からあるが、それとはちょっと違う…

掬読メモ:独学大全(読書猿)…独学はブートストラップできる

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 作者:読書猿 発売日: 2020/09/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) 『アイデア大全』、『問題解決大全』の著者として知られる市井の著述家、読書猿(どくしょざる)氏による新刊。前著の…

新刊紹介:機械翻訳(ティエリー・ポイボー著、高橋聡 訳、中澤敏明 解説)…機械翻訳の実像を捉える、ユーザーのための一冊

筆者が企画・編集で携わった翻訳書、『機械翻訳:歴史・技術・産業』の紹介記事です。同書は2020年9月29日前後の発売予定です。 機械翻訳:歴史・技術・産業 作者:ティエリー・ポイボー 発売日: 2020/09/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) 「機械翻訳」――…

読書メモ:心を知るための人工知能(谷口忠大 著)

心を知るための人工知能: 認知科学としての記号創発ロボティクス (越境する認知科学) 作者:忠大, 谷口 発売日: 2020/06/09 メディア: 単行本 「記号創発ロボティクス」を掲げ、その旗振り役として分野をけん引するAI研究者、谷口忠大氏による最新著。 共立出…

読書メモ:一人の科学ファンとして『ブルーノ・ラトゥールの取説』(久保明教)を読む

記:丸山隆一(@rmaruy) ブルーノ・ラトゥールの取説 (シリーズ〈哲学への扉〉) 作者:久保明教 発売日: 2019/08/09 メディア: 単行本 久保明教による『ブルーノ・ラトゥールの取説』(以下、『取説』)は、ブルーノ・ラトゥールという哲学者の著作について…

読書メモ:NeuroScience Fiction(Rodrigo Quian Quiroga 著)

NeuroScience Fiction: From "2001: A Space Odyssey" to "Inception," How Neuroscience Is Transforming Sci-Fi into Reality—While Challenging Our Beliefs About ... and What Makes us Human (English Edition) 作者:Quian Quiroga, Rodrigo 発売日: 2…

読書メモ:意識の神秘を暴く(ファインバーグ&マラット 著、鈴木大地訳)…進化的起源から解明される意識の謎

意識の神秘を暴く: 脳と心の生命史 作者:ファインバーグ,トッド・E.,マラット,ジョン・M. 発売日: 2020/04/16 メディア: 単行本 『意識の神秘を暴く(Consciousness Demystified)』は、そのタイトルが示すとおり、 意識現象の科学的解明を目指した一冊であ…

読書メモ:Galileo's Error (by Philip Goff)…なぜ意識の科学に「汎心論」が必要か

Galileo's Error: Foundations for a New Science of Consciousness 作者:Goff, Philip 発売日: 2019/11/07 メディア: ペーパーバック 心の哲学や意識の科学をフォローしていると、最近「汎心論」という言葉をよく聞く。心の哲学における汎心論とは、「意識…