重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

2016-01-01から1年間の記事一覧

今年読んだ本で振り返る2016年

大晦日。ぼっーとしていると年が明けてしまうので、その前に、今年1年を振り返っておきたい。 たとえば10年後の自分は、2016年をどんな年として思い出すかと考えると、「トランプが大統領に決まった年」になりそうだ。案外、それに尽きているかも…。 でも、…

読書メモ:漱石のこころ(赤木昭夫 著)

漱石のこころ――その哲学と文学 (岩波新書) 作者: 赤木昭夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/12/21 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 夏目漱石ほど、作品が読まれた日本人の小説家はいない。漱石の作品が好きな人は多いが、その理由は人そ…

読書メモ:幸福はなぜ哲学の問題になるのか(青山拓央 著)

幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator) 作者: 青山拓央 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 「私はいま幸せです」と誰かが言うのを聞くと、なぜか少しだけ背筋が寒くなる。結婚した…

思考整理メモ:人工知能をトランスサイエンス問題として考えてみる

2016年も、やはり人工知能ブームがすごかった。 理工書出版の世界でもやはり影響も大きくて、一つの技術の話題でこれだけの数の本が出るというのは、ちょっと例がないのではないかと思う。国会図書館のサイトにて「人工知能」をキーワードに「本」を検索して…

読書メモ:精霊の箱(川添愛 著)

精霊の箱 上: チューリングマシンをめぐる冒険 作者: 川添愛 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2016/10/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 精霊の箱 下: チューリングマシンをめぐる冒険 作者: 川添愛 出版社/メーカー: 東京大…

読書メモ:デスマーチはなぜなくならないのか(宮地弘子 著)

デスマーチはなぜなくならないのか IT化時代の社会問題として考える (光文社新書) 作者: 宮地弘子 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/11/17 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る タイトルと帯のインパクトで思わず手にとったこの本。すぐ棚に戻す…

読書メモ:「科学コミュニケーション」関連書籍4冊

今年度、北大CoSTEPを受講している。(集中演習についてこの前少し書いた。) CoSTEPは「科学コミュニケーター」を養成することを目的とするプログラムなのだが、この「科学コミュニケーター」あるいは「科学コミュニケーション」という言葉は、ちょっとわか…

物理学者と哲学者の(ディス)コミュニケーション ~(再掲)読書メモ:『科学を語るとはどういうことか』~

先日、youtube配信されていた以下の対談を観ました。 この動画、個人的にはとても面白くて、下記のツイートで紹介しました。 宇宙物理学者の柴田氏の「倫理学への不満」に、伊勢田哲治先生がガチで答えるという対談。文理のディスコミュニケーションが、これ…

読書メモ:工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱(今野浩 著)

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱 作者: 今野浩 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2016/10/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 最近は、昼飯を外で食べることにしている。以前は会社で仕出し弁当を食べていたのだが、ハンバーグ・焼き魚・コ…

読書メモ:古市くん、社会学を学び直しなさい‼

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書) 作者: 古市憲寿 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/10/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 古市憲寿さんと12人の社会学者との対談集。登場するのは、宮台真司氏、大澤真幸氏、橋爪大…

読書メモ:〈わたし〉は脳に操られているのか (エリエザ―・スタンバーグ 著)

〈わたし〉は脳に操られているのか : 意識がアルゴリズムで解けないわけ 作者: エリエザー・スタンバーグ,大田直子 出版社/メーカー: インターシフト 発売日: 2016/09/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「自由意志」はあるのか、ないのか。 …

受講メモ:書くことについて考えたこと(CoSTEPライティング演習の感想)

このまえの三連休、北海道大学に行ってきました。北大の科学技術コミュニケ―ション教育プログラム(=CoSTEP)の集中演習として開講されたライティング演習に参加するためです。2泊3日で、科学ライティングの考え方や技術について学びました。 当日の様子…

読書メモ:生命、エネルギー、進化(ニック・レーン 著)

生命、エネルギー、進化 作者: ニック・レーン,斉藤隆央 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2016/09/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 先日、木星の惑星エウロパにかんするNASAの発表が話題になった。どうやらエウロパには大量の水…

読書メモ:不屈の棋士(大川慎太郎 著)

不屈の棋士 (講談社現代新書) 作者: 大川慎太郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 将棋の現役プロ棋士に将棋AIにまつわる意見を聞いたインタビュー集。 自分はとくに将棋ファンでもなく、電王…

読書メモ:情報社会の〈哲学〉(大黒岳彦 著)

情報社会の〈哲学〉: グーグル・ビッグデータ・人工知能 作者: 大黒岳彦 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2016/08/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 月刊誌『現代思想』(青土社)などに発表された五つの論考に、書き下ろしの章を加えた単…

4年半前の所信表明(自己紹介のかわりに)

久しぶりにiPadを開いたら、だいぶ前に書いた文章の下書きが出てきた。たしか、就職する直前、学生として参加した最後の学会の最中に書いたもの。脳のこととか本のこととか、4年半たった今でも考えていることがほとんど変わっていないことに驚く(初心を忘れ…

読書メモ:The Relativistic Brain (by M. Nicolelis & R. Cicurel)

The Relativistic Brain: How it works and why it cannot be simulated by a Turing machine (English Edition) 作者: Miguel Nicolelis,Ronald Cicurel 出版社/メーカー: Kios Press 発売日: 2015/04/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ブ…

聴講メモ:『人工知能のための哲学塾』刊行記念イベント

昨晩はこちらのイベントに参加してきました。 www.bnn.co.jp 人工知能のための哲学塾 作者: 三宅陽一郎 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社 発売日: 2016/08/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る この本のもとになった「人工知能のた…

読書メモ:Patient H.M. (by Luke Dittrich)

Patient H.M.: A Story of Memory, Madness, and Family Secrets 作者: Luke Dittrich 出版社/メーカー: Random House 発売日: 2016/08/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 患者H.M.と、彼に携わった科学者たちを描いたルポルタージュ。 言わ…

読書メモ:学びとは何か(今井むつみ 著)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書) 作者: 今井むつみ 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/03/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る 最近、「大人になっても学び続けることが大事だ」というようなことがよく言われている…

読書メモ(再掲):人間さまお断り(ジェリー・カプラン)

人間さまお断り 作者: ジェリー・カプラン,安原和見 出版社/メーカー: 三省堂 発売日: 2016/08/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 昨年の夏、原書で読んだ本。翻訳が出たので、感想文を再掲します。タイトルの訳し方は上手いですね。 *** H…

読書メモ:学術書の編集者(橘宗吾 著)

学術書の編集者 作者: 橘宗吾 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会 発売日: 2016/07/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 学術書とは何か、学術書の編集とはどんな仕事なのかについて、名古屋大学出版会の編集長が綴った一冊。タイトル…

読書メモ:コンビニ人間

コンビニ人間 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/07/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 先日の芥川賞受賞作。 人には、自分に理解できない行動原理を持つ人を不気味に思う性質がある。不気味がるだけなら良いの…

読書メモ:会社の中はジレンマだらけ(本間浩輔・中原淳 著)

会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング (光文社新書) 作者: 本間浩輔,中原淳 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/04/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 北大CoSTEPの講義で本間浩輔さんの話を聞く機会があり…

読書メモ:ビッグデータと人工知能(西垣通 著)

ビッグデータと人工知能 - 可能性と罠を見極める (中公新書) 作者: 西垣通 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る どんな技術革新の「ブーム」にも、それに油を注ぐ(あおる)人と、水を掛けて火消し…

読書メモ:人工知能と経済の未来(井上智洋 著)

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書 1091) 作者: 井上智洋 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/07/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ここ数年AIブームで出てきた二つの懸念、つまり 人工知能が高度になりすぎて、制御不能…

読書メモ:脳はいかに治癒をもたらすか(ノーマン・ドイジ)

脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線 作者: ノーマンドイジ,高橋洋 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2016/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 従来であれば「治らない」と診断されるような脳の病気が、嘘のように治っ…

日々の雑感メモ:参院選の前に

先日お会いした、とある物理学者の先生が、「物理学者どうしの『議論』というものについて、いまひとつ理解されていないと感じる」というようなことを言っていた。 自分のアイディアを相手にぶつけ、アイディアの未熟な部分を指摘してもらって、より良いもの…

読書メモ:エントロピーの正体(アリー・ベン=ナイム著)

エントロピーの正体 作者: アリー・ベン=ナイム,小野嘉之 出版社/メーカー: 丸善出版 発売日: 2015/12/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る エントロピーという概念には、好奇心を引きつける力がある。 含蓄のある物理量だ。「…

読書メモ:脳がわかれば心がわかるか(山本貴光・吉川浩満)

脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座 (homo Viator) 作者: 山本貴光,吉川浩満 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/06/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 『心脳問題』(2004年)増補改訂版。旧版を読んでから2年…