重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

読書メモ:彼女たちの売春(ワリキリ)

日曜日の夜.また一週間が始まってしまうのは憂鬱だけど,最近は平日にも良いことが一つだけあって,それは「荻上チキ・Session-22」(月曜から金曜の夜22時から深夜にかけてTBSラジオで放送)が聞けること.この三ヶ月くらい,ほとんど毎日聞いている(眠くなるまで聞いて,残りは翌日ポッドキャストで).ほんとに良い番組だと思う.

このラジオ番組の何がすばらしいかというと,ホットな時事ネタについて専門家の意見が聞けたり,小説家・評論家・科学者など各分野の豪華ゲストの深い話が聞けたりするのが良いのだけれど,一番の魅力は,やはりゲストから話を引き出す荻上チキさん本人だと思う.

にわかファンとしては,彼の著書をいろいろと読まねばと思っていて,今週末はこれを読んだ.

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

 

出会い喫茶」と「出会い系サイト」で売春を行う女性をテーマにしたルポルタージュ荻上さん本人が,客としての立場で現場へ行き,総勢100人へのインタビュー取材を行っている.「出会い喫茶」がなんたるものかや「ワリキリ」という言葉も知らなかった自分としては,本書の内容は(お気楽な言い方になってしまうが)貴重な社会勉強になった.ただ,それ以上に,ラジオで感じる著者の力強さの源泉を垣間見たような気がした.リスクを侵して,手間と予算をかけて,なぜこのような取材を続けることができたのだろうか.ライターとして成果を求める功名心? 明白な社会問題からみんなが目を背けていることへの怒り? もしくは,この社会で本当に起こっていることを知りたいという好奇心? そのどれ一つをとっても説明できないような,行動力と冷静さと当事者への共感力の絶妙なバランスを著者が持ち合わせていることが,売春というテーマへの切り込み方を通して伝わってきた.ますます明日からのsessionが楽しみになった.

www.tbsradio.jp