重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

開催記録メモ:「会わない(読んで書くだけの)読書会」という試み

先月、ふとした思いつきで、とある「読書会」を企画しました。題して、「会わない(読んで書くだけの)読書会」。その名のとおり、「会わずに、オンラインで」読書会をしてみようという試みです。これが、やってみると面白かったので、ここに体験談として書いておきます。

参加者募集

発端は、私が今年2月に(リアルの)読書会の企画に関わり、たいへん面白かったのでまた企画しようと思っていたところ、今般の自粛の日々が始まったことでした。人が集まる読書会が難しいなら、オンラインでやってみようと思い立ったのでした。

2月末にTwitterFacebookで下記のような募集をかけました。

 

最初はまったく反応がなく、「あー企画だおれ(汗)」と思っていたところ、ダメもとでいくつかのSlackチャネルでも募集したことも功を奏し、10名弱の方から参加表明をいただきました。

読書会のルール作り

「読書会」と銘打ってはいますが、Zoomなどを使った通話は一切行わず、「テキストベース・非同期」のやりとりのみとしました。理由は、単純に自分の技術力不足に加え、全員の日時を揃えるのが難しく思えたことでした。期日までに、課題書の感想文を持ち寄ってもらい、それを一斉公開して、あとは適宜コメントし合う形としました。

また、下記のような留意事項を皆さんにお願いしました。

  • 通常の読書会と同じ考え方で、基本的には「クローズド」で行います。誰かが書いたものを読書会の外で公開するときには、必ず本人の許可を得てください。ただし、もちろん読書会の感想をSNSなどで紹介いただくのは構いません。
  • 期日までに寄せていただく「感想文」は、分量も、内容も、完全に任意です。「素人っぽすぎるんじゃないか?」とか、逆に「ハイレベルすぎて他の方がついてこれないんじゃないか?」などの配慮は不要です。場の空気や、時間的制約に縛られない「会わない読書会」のメリットを発揮していきたいと思います。

メンバーが確定してから約四週間は、各々が課題書を読み、感想文をとりまとめる時間としました。Facebookグループをつくり、参照した文献情報の共有や、軽い雑談をする場としました。

感想文の共有方法は、Google documentやSlackなど、いろいろ検討したのですが、メンバーのうちの一人が推薦してくれたScrapboxという文書共有ツールを使うことにしました。Scrapboxは、軽快なノーテーションや、複数文書間のリンクのしやすさが特長(のよう)です。

読書会の様子

3月下旬、いよいよメンバーからの感想文が届きました。1000字足らずの感想もあれば、1万字越えの本格的な書評も。想像を上回る熱量の感想・評論が寄せられました。

それをScrapboxで公開し、留意事項として下記のような連絡をしました。

【留意事項】

  • この後は、自分以外の評論・感想を読み、適宜議論を開始してください。ほかの人へのコメントは、そのページの「コメント欄」に書くか、適宜新しいページを作ってリンクを張る、という方法にしたいと思います。
  • 当初、3日間くらいで集中的に議論をすることを想定していましたが、もう少し時間をかけて「細く長く」やってもいいかもと思っています。理由は、コロナウイルス対策で皆さまご事情があろうこと、一部の方がものすごい大作を書いてくれているので、読むのに時間がかかると思われること、です。
  • コメントは、自由に、好きな人宛てに送ってください。ScrapboxFacebookで、熱くディープな議論を繰り広げていただいて構いません。ただ、ときには、全体をみて手短にでもまんべんなくコメントをする配慮をいただけると、大変うれしいです(必須ではありません)。
  • 発言内容は、不当な個人攻撃などを除いて基本的に自由です。ただ、本書と全く関係ないやりとりについては、できればScrapboxよりはFacebookでお願いします。
  • 議論はクローズドですので、うっかりリンクを公開しないようにご注意ください。誰かが書いたことを外部で引用するときには、本人の許諾を得てください。 

 

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Scrapboxの画面 各人の感想文やテーマ別のスレッドがカード形式で表示される

ディスカッション開始から約二週間経ちますが、議論はとても盛り上がっており(コメントだけで10万字を優に超える文量)、現在も続いています。

感想

以上、私が思い付きで始めた「会わない(読んで書くだけの)読書会」についてご紹介しました。この読書会で他のメンバーから教えていただいたこと、またそれに応答するために自分で考えて書いたことは、とても勉強になりました。メンバーのひとりからも、「改めて文章にしてみることは有意義だと感じた」という趣旨の感想をいただきました。当然、リアルな読書会に比べると制約もありますが、テキストベース・非同期型の読書会というのも、独自の良さがあると感じています。

これが最適なやり方かはわかりません。もっとよいツールや方法もあるだろうと思います。また、今回とてもうまくいったのは、まずは課題書の力。そして、何より参加者に恵まれたからであり、いつもこのやり方で有意義な読書会ができるわけではないと思います。あくまで一つの体験談として、シェアしたいと思った次第です。

「在野研究」ならぬ「在野勉強」の一つのやり方として、いかがでしょうか。