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読書メモなど

読書メモ:ひとを愛することができない(中島義道 著)

 

ひとを愛することができない―マイナスのナルシスの告白 (角川文庫)

ひとを愛することができない―マイナスのナルシスの告白 (角川文庫)

 

たまに、中島義道氏の著作が読みたくなる。先日そんなタイミングがやってきた。どうせならと、一番痛々しかったタイトルにつられてKindleに落としたこの本は、期待どおり、刺激強めで、心揺さぶられる内容だった。

本書で著者は、「なぜ私は人を愛することができないのか」を書き連ねている。

副題に「告白」とあるとおり、著者の赤裸々な自分語りが本書の大半を占める。妻や子を愛するそぶりをまったく見せない父と、その父に過剰なまでに愛を求めながら絶望する母。そんな両親に育てられたせいで、いかに自分が人を愛せない人間になり、いかに妻や子供に憎まれる男に自身が成り果てたか。

陰鬱で、悲惨で、もしかしたらありふれた話だ。しかもそれをわざわざ自分で語るというのだから、近づきたくないタイプの本に聞こえるかもしれない。でも、著者の手にかかると、そんな内容の本が面白く読めてしまう。著者の学問、分析力、描写力のなせる業なのだろう。

愛とは何か。哲学者や文学者の言葉も豊富に引きながら、「観念としての愛」を論じ、その上で、我が身が受けた愛、自分が与え(ることができなかっ)た愛を考察している。そこでは、「私」を「彼」あるいは「中島」に置き換えたとしても違和感ないほど、客観的視点で書かれている印象を受ける。

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自分の家族と自分との関係について、とくにそれが破綻をきたしている場合には、書ける人は多くないように思う。書くことが周囲を傷つけうることを考えれば、当たり前だと思う。でも、一読者としては、そこが一番気になったりする。そして、たまにそれを書いてしまっているように見える書き手がいると、ハッとして目が離せなくなる。