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読書メモなど

受講メモ:書くことについて考えたこと(CoSTEPライティング演習の感想)

このまえの三連休、北海道大学に行ってきました。北大の科学技術コミュニケ―ション教育プログラム(=CoSTEP)の集中演習として開講されたライティング演習に参加するためです。2泊3日で、科学ライティングの考え方や技術について学びました。

当日の様子などは公式のレポートに後日発表されると思うので、ここでは一参加者としての感想を書きます。とくに、「書く」ということについて得た気づきを中心に書いてみたいと思います。

集中演習の概要

3日間、北大キャンパス内の教室に終日通うかたちで行われました。受講生としては、学生・院生だけでなく、高校の先生、大学の研究者、研究機関の広報、編集者(私)など、いろいろな立場で「科学について書く」ことを実践・志望する20名が参加していました。短いエッセイやインタビュー記事を書く演習や、あらかじめ書いてきた文章を講師や参加者同士のレビューを通してブラッシュアップしていく演習、CoSTEPスタッフと科学ライターや翻訳者からなる講師陣によるレクチャーなどが盛り込まれた、充実したプログラムでした。

3日間、朝から晩まで「書くこと」について考え続ける機会をもらったことで、いろいろと自分の中で腑に落ちることがありました。

文章はどうやってできあがっていくのか

これまでも、なるべく文章を書こうとに心がけてきたつもりなのですが、どうしても書くことへの苦手意識がありました。「○○について書こう」と思ってPCに向かっても、全然書けない日があって、しかもその理由はよくわからない。また、前もって執筆が終わるまでにどれくらいの時間がかかるかわからないというのも、身構えてしまう原因になっていました。考えてみると、「文章ができるまでのプロセス」や「書いているときの自分の頭の中」がよくわからないまま、やみくもに書いていました。

今回の集中演習を通して、そのブラックボックスの中身が少し解明されたような気がしています。とくに、執筆のプロセスにはいくつかの「チェックポイント」となるような瞬間があることに気づきました。

  •  文章の着地点が見える瞬間
  •  書き手から読み手へと視点を切り替える瞬間
  •  表現の「正解」が見つかる瞬間

これらのチェックポイントを意識することで、執筆の見通しがかなりよくなるというのが、演習で得た私の収穫です。どういう瞬間か、簡単に説明してみます。

① 文章の着地点が見える瞬間

一番目は、文章の構成が決まる瞬間です。「こういうことについて書きたい」という気持ちは、そのまま文章になるわけではなく、何らかのストーリー=構成に落とし込まけなりません。構成づくりのコツはわからないのですが、今回の演習で400字のエッセイを書いたときに、冒頭の部分を書き始めて20分くらいたったころ、突然エッセイの「オチ」を思いついた瞬間がありました。オチを思いついてしまえば、そこに向かう文章の流れを決めるのは割と簡単でした。どんな文章にも「オチ」とは言わずとも何らかの「着地点」はあるはずなので、まずはこの「ああ、こう書けばまとまるな」というひらめきを得ることが、目指すべき第一の到達地点になると思います。

② 読み手へと視点を切り替える瞬間

次は、「書きたい・伝えたい」という思いから一度離れて、読者としての視点に切り替える瞬間です。今回、自分が書いた文章へ多くの方のフィードバックをもらいました。そのなかで知ったのは、自分の書いていることと読み手がその文章に期待することは、必ずしも同じではないということでした。当初の自分の思いを引きずってしまうと、①で定めた構成にとって余計な記述が残り文章の流れが悪くなっていたり、逆に新らしく必要になってくる主張に対する論証が不十分になっていたりしがちです。文章の大枠ができたら、どこかの時点で頭を「読者視点」に切り替え、記述に過不足がないかをチェックする必要があります。この視点切り替えのタイミングを意識する時点が第2の到達目標になりそうです。

③ 表現の「正解」が見つかる瞬間

最後は、推敲段階に体験するいくつもの「瞬間」です。一通り書き終えた文章を読み返すと、違和感のある表現が多く見つかります。講師の先生の一人は、この最後の推敲プロセスを「粗さがし」と呼んでいました。「粗さがし」をして見つかる違和感は、その文で書き手が伝えたい内容を表すのに、選ばれている表現が適していないことからくる違和感です。類語辞典を引くことなどしてじっくり考えれば、「正解」の表現に置き換えることができます。正しい表現に出会ったときには、「これだ!」という実感として体験できます。全体を通して違和感がなくなれば、完成です。

 

以上、文章ができあがるまでのプロセスを自分なりに言語化してみました。こうやって整理してみたいま、原稿に向かうときの「五里霧中」な不安感が緩和されている気がしています。

なお、以上はあくまで私の整理であり、演習内容の咀嚼の仕方は受講生ごとにさまざまだと思います。今回の集中演習では、執筆のノウハウやテクニックを「先生から教わる」のではなく、受講生自身が実践を通して気づくことが重視されていました。そのための「講義や演習の内容を振り返る仕組み」がプログラム内にいくつも組み込まれていたのが印象的でした。

おわりに

「文章力は天性のもの」という考え方と「訓練すればうまくなる」という考え方があります。3日間の演習を経て、少なくともサイエンス・ライティングなどの説明的な文章に関しては確実に上達可能だという手ごたえを得ました。そのためにはただ量をこなすだけではなく、他人からフィードバックをもらったり、書くというプロセス自体について考えたりするというのが大事だということを、身をもって学ぶことができました。

緻密に練られたプログラムと素晴らしいチームワーク、ホスピタリティで迎えてくださったCoSTEPの先生方に、深く感謝申し上げます。