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読書メモなど

読書メモ:げんきな日本論(橋爪大三郎+大澤真幸)

 

 「日本論」とあるが「日本史」の本。

社会学者の橋爪大三郎さんと大澤真幸さんが、縄文時代から幕末までの日本史のトピックを取り上げて、「あれはこうことだったんじゃないか」などとあれこれ語り合う、という内容。目次は以下のとおり。

第一部 はじまりの日本
1、なぜ日本の土器は、世界で一番古いのか
2、なぜ日本には、青銅器時代がないのか
3、なぜ日本では、大きな古墳が造られたのか
4、なぜ日本には、天皇がいるのか
5、なぜ日本人は、仏教を受け入れたのか
6、なぜ日本は、律令制を受け入れたのか
第二部 なかほどの日本
7、なぜ日本には、貴族なるものが存在するのか
8、なぜ日本には、源氏物語が存在するのか
9、なぜ日本では、院政なるものが生まれるのか
10、なぜ日本には、武士なるものが存在するのか
11、なぜ日本には、幕府なるものが存在するのか
12、なぜ日本人は、一揆なるものを結ぶのか
第三部 たけなわの日本
13、なぜ信長は、安土城を造ったのか
14、なぜ秀吉は、朝鮮に攻め込んだのか
15、なぜ鉄砲は、市民社会をうみ出さなかったか
16、なぜ江戸時代の人びとは、儒学国学蘭学を学んだのか
17、なぜ武士たちは、尊皇思想にとりこまれていくのか
18、なぜ攘夷のはずが、開国になるのか

(……この目次だけで読みたくなりませんか!?)

 

目次を見て分かるように、本書の特徴は、「なぜ」を問うているところだと思う。

僕たちは学校で日本史を習った。『まんが・日本の歴史』も何回も読んだし、大人になってからも大河ドラマを見たりして、一通りの流れは頭に入っている。「もし明智光秀が信長暗殺に失敗していたら」など、歴史の「たら・れば」について頭をめぐらせたこともなくはない。

でも、「なぜ日本がこの道をたどったのか」については、あまり考えたことがないのではないか。少なくとも僕はなかった。たとえば

  • なぜ、日本人はひらがなとカタカナを併用し続けたのか
  • なぜ、誰も天皇制を覆そうとしなかったのか
  • なぜ、「武士道」などという変わった倫理規範が生まれたのか

など。言われてみれば、不思議なことだらけだ。

 

本書では、オールラウンドな著作で知られる橋爪大三郎さんと大澤真幸さんの二人が、そうした日本史の「なぜ」の問いを提示し、それぞれの解釈を述べあっていく。意表を突く視点が多くて勉強になる。

 

本書に通底する考え方を強引にまとめるとすれば、

  • 天皇や将軍による統治の正統性(レジティマシー)を確保するために、時の権力者がどのような体制を選び、思想を利用したかに注目する
  • 日本の歴史の普遍性と特殊性を、中国やヨーロッパやイスラム文化圏の歴史と比較することで考察する

などとなるだろうか。そうした視点を通して見えてくる18の「なぜ」への答えが気になる方は、ぜひ本書を読んでみて欲しい。

本書を読むと、いかに日本の歩みが偶然の産物かということがわかる。それは「○○の乱」とか「○○の変」とかの個々の出来事についてだけでなく、「イエ制度」とか「天皇制」など日本人としてのアイデンティティにかかわるものについても言える。そうした精神面のことがらも、平安時代の荘園制とか、戦国時代の結末とか、徳川幕府が選んだ統治の仕組みとか、そういう一つ一つの要素によって偶然的に出来上がってきたことがわかる。

「日本人は○○だ」と断定するような暗い日本論に対して、本書の日本史の読み解き方はとにかく自由で楽しくて明るい。まさに「げんきな日本論」という書名がぴったりだ。