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読書メモなど

読書メモ:工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱(今野浩 著)

 

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱

工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱

 

最近は、昼飯を外で食べることにしている。以前は会社で仕出し弁当を食べていたのだが、ハンバーグ・焼き魚・コロッケなどの主役級のおかずがいくつも入った豪華弁当は虚弱な腸にはダメージが大きすぎた。あちこち探して、千代田区役所の食堂をみつけた。主菜(3種類から選べる)・小ライス・みそ汁・小鉢の500円定食。今の自分にはちょうどよい。振り返ると大学生のころの食生活が一番酷くて、弁当箱に白米とサバの缶詰をつめて昼ごはんにしたり、食パン一斤を晩ご飯にしたりしていた。少なくない仕送りをもらっていたのだが、ただ単に「食べること」を軽んじていたと思う。成人してから腸の働きが思わしくないのは、大学時の粗悪な食生活のせいかもしれない。悔やまれる。

『工学部ヒラノ教授とおもいでの弁当箱』は、ヒラノ教授(こと著者)の生涯の食生活の遍歴をつまびらかにしたエッセイである。大学の人間模様を赤裸々に描いて「工学部の語り部」として知られるようになった著者。その後は同僚・師匠・父親・妻など様々な人たちとのエピソードを「ヒラノ教授シリーズ」に描いてきたが、本書にいたって「食」がテーマになった。76歳のヒラノ教授の食の履歴の厚みは、28歳の私とは比較にならない。

ヒラノ教授はけっしてグルメではない。ロールキャベツやカレーが好きだそうだ。母親の料理の腕は今一つだったが、奥さんの料理は素晴らしかったという。マクドナルドは好まないようだが、すき家には時々行くらしい。セブンイレブンのサンドイッチは絶賛している。そんなヒラノ教授の舌を形成した、戦後の食料事情、家庭事情、高校・大学での交友、妻との出会い、アメリカ赴任などを、克明な記憶力(と巧妙な脚色力?)で描いていく。東工大の教授になってからは、午前10時に「早弁」していたそうだ。「弁当は一人で食べるべし」という自己ルールがあったそうなのだが、その理由には共感できた。

ヒラノ教授の鋭い分析によれば、配偶者の作ったものをたくさん・おいしそうに食べられるかが夫婦円満の重要なファクターになる。ということは、作る側としては「配偶者の口に合うものを作れること」が大事だということにもなる。ヒラノ教授は、食べるのも作るのも両方できた。料理が苦手で腹の弱い私は、結構ヤバいかも、と思った。