重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

認知科学

思考整理メモ:「受注」する脳 ~「発注モデル」から考える「AIの自律性」と脳の計算パラダイムの向こう側~

筆者が探究テーマとしている「神経科学の哲学」と「記憶の設計学」に関してあれこれ考えているなか、「発注」という概念が、一つのキーワードが浮かび上がってきました。以下は、そのスケッチ的なメモです。本記事で少しでも手ごたえが得られれば、徐々に肉…

読書メモ:心を知るための人工知能(谷口忠大 著)

心を知るための人工知能: 認知科学としての記号創発ロボティクス (越境する認知科学) 作者:忠大, 谷口 発売日: 2020/06/09 メディア: 単行本 「記号創発ロボティクス」を掲げ、その旗振り役として分野をけん引するAI研究者、谷口忠大氏による最新著。 共立出…

読書メモ:Galileo's Error (by Philip Goff)…なぜ意識の科学に「汎心論」が必要か

Galileo's Error: Foundations for a New Science of Consciousness 作者:Goff, Philip 発売日: 2019/11/07 メディア: ペーパーバック 心の哲学や意識の科学をフォローしていると、最近「汎心論」という言葉をよく聞く。心の哲学における汎心論とは、「意識…

読書メモ:デジタルで読む脳×紙の本で読む脳(メアリアン・ウルフ著、大田直子訳)

デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳 :「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる 作者:メアリアン・ウルフ 出版社/メーカー: インターシフト (合同出版) 発売日: 2020/02/06 メディア: 単行本 Reader, Come Home: The Reading Brain in a Digital World …

精読メモ:『心にとって時間とは何か』(青山拓央 著)

以下は、青山拓央著『心にとって時間とは何か』の読書会(2020年2月6日開催、@下北沢ダーウィンルーム)用に作成した、読書メモです。 【注】本メモには、丸山個人の解釈が多分に含まれ、著者の意図を曲解している点も多数あるかもしれません。メモの内容に…

読書メモ:情動はこうしてつくられる(リサ・フェルドマン・バレット 著、高橋洋 訳)

情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論 作者: リサ・フェルドマン・バレット,高橋洋 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2019/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 情動(emotion)の研究を続けてきた心理学者・…

続・どうすれば脳を「理解」できるのか: 分かり方は一つじゃない~脳理解の多元主義へ~

文章:丸山隆一(@rmaruy) (注)本記事は鈴木力憲さんと書いた「どうすれば脳を「理解」できるのか:「コンピュータチップの神経科学」の続編ですが、本記事の筆者は丸山一人です。鈴木さんとの議論から多くのヒントを得ているものの、基本的には個人の考…

読書メモ:解離をめぐる2冊(柴田雅俊『解離性障害』、岡野憲一郎『解離新時代』)

解離性障害にまつわる本を二冊読んだ。 解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書) 作者: 柴山雅俊 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2007/09/01 メディア: 新書 購入: 6人 クリック: 48回 この商品を含むブログ (18件) を見る 解離新時代―…

近刊紹介メモ:『思いどおりになんて育たない:反ペアレンティングの科学』(アリソン・ゴプニック 著、渡会圭子 訳、森口佑介 解説)…【編集担当による紹介文】

思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学 作者: アリソン・ゴプニック,渡会圭子,森口佑介 出版社/メーカー: 森北出版 発売日: 2019/07/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私の一日は、2歳の娘を保育園に送り届けることから始ま…

読書メモ(勉強モード):Mental Time Travel (by Kourken Michaelian)…記憶とは過去のシミュレーションである【前編】

Mental Time Travel: Episodic Memory and Our Knowledge of the Personal Past (Life and Mind: Philosophical Issues in Biology and Psychology) (English Edition) 作者: Kourken Michaelian 出版社/メーカー: The MIT Press 発売日: 2016/02/19 メディ…

【再掲】読書メモ:人が自分をだます理由(ロビン・ハンソン、ケヴィン・シムラ―著)

人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学 作者: ロビン・ハンソン,ケヴィン・シムラー,大槻敦子 出版社/メーカー: 原書房 発売日: 2019/02/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る こちらの本が翻訳出版されていました。原書の読書メモを再掲し…

読書メモ:Why?: What Makes Us Curious (by Mario Livio)…好奇心をめぐる好奇心

Why?: What Makes Us Curious 作者: Mario Livio 出版社/メーカー: Simon & Schuster 発売日: 2017/07/11 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 著者のマリオ・リヴィオ氏は天体物理学者。一流のポピュラーサイエンスの書き手としても知ら…

近刊紹介メモ:脳と時間(ディーン・ブオノマーノ 著、村上郁也 訳)…【編集担当による紹介文】

脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎 作者: ディーン・ブオノマーノ,村上郁也 出版社/メーカー: 森北出版 発売日: 2018/10/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ひょっとすると、来年から「サマータイム」が導入されるかもしれ…

読書メモ(再掲):知ってるつもり――無知の科学(S. スローマン & P. ファーンバック)

知ってるつもり――無知の科学 作者: スティーブンスローマン,フィリップファーンバック,土方奈美 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/04/04 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る ちょうど一年前に読んだ"The Knowledge Illusio…

読書メモ:The Elephant in the Brain(Kevin Simler & Robin Hanson)

The Elephant in the Brain: Hidden Motives in Everyday Life 作者: Kevin Simler,Robin Hanson 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr 発売日: 2018/01/02 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る 最近邦訳が出た『全脳エミュレーションの時代』の…

読書メモ:Altered Traits(Daniel Goleman & Richard Davidson)…「瞑想の脳科学」はどこまできたか

Altered Traits: Science Reveals How Meditation Changes Your Mind, Brain, and Body 作者: Daniel Goleman,Richard J. Davidson 出版社/メーカー: Avery 発売日: 2017/09/05 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 瞑想の科学的研究の第一…

文献メモ:ディープラーニングを人間の学習に近づける(Lake et al. 2017を読んで)

論文を一つ紹介します。 Lake, Brenden M., et al. "Building machines that learn and think like people." Behavioral and Brain Sciences 40 (2017). https://cims.nyu.edu/~brenden/LakeEtAl2017BBS.pdf ニューヨーク大学のBrenden Lake、MITのJoshua Te…

【再掲】読書メモ:アルゴリズム思考術(B. クリスチャン、T. グリフィス著)

アルゴリズム思考術:問題解決の最強ツール 作者: ブライアンクリスチャン,トムグリフィス,田沢恭子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/10/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 邦題と原題が結びつかず見逃していたのです…

読書メモ(再掲):かくて行動経済学は生まれり(マイケル・ルイス著)

かくて行動経済学は生まれり 作者: マイケルルイス,Michael Lewis,渡会圭子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2017/07/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『かくて行動経済学は生まれり』という邦題には意表を突かれた。副題の"Friendship"…

読書メモ:ブラックボックス化する現代(下條信輔 著)

ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知 作者: 下條信輔 出版社/メーカー: 日本評論社 発売日: 2017/06/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 認知科学者、下條信輔氏による社会評論。2010年から執筆を担当している朝日新聞デジタル…

読書メモ:Behave(Robert Sapolsky著)

Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst 作者: Robert M. Sapolsky 出版社/メーカー: Penguin Press 発売日: 2017/05/02 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「なぜ私はどうでもいいことで怒ってしまうのか?」「あの人はなぜ浮気…

読書メモ:The Knowledge Illusion(by Steven Sloman & Philip Fernbach)

たしか小学生のころ、「総理大臣ってすごいな」と思っていた。 自分は学校の宿題やら習い事やらで頭がいっぱいなのに、大人というのは自分以外のことにも気を配っている。たとえば通学路のガードレール。これが設置されるまでには、「この道にガードレールが…

読書メモ:おさなごころを科学する(森口佑介 著)

おさなごころを科学する: 進化する幼児観 作者: 森口佑介 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2014/03/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 図書館の「子育て本」コーナーで何気なく手にとった本。斜め読みですませるつもりが、予想外にしっかりし…

読書メモ:The Undoing Project (by Michael Lewis)

前から、ダニエル・カーネマンのことが気になっていた。 それは、おもに『ファスト&スロー』の著者としてだった。『ファスト&スロー』は2011年に出た本だが、当時印象的だったのは、これを読んだ人が、皆得意げに「システム1」だとか「○○バイアス」だとか…

読書メモ:学びとは何か(今井むつみ 著)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書) 作者: 今井むつみ 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/03/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る 最近、「大人になっても学び続けることが大事だ」というようなことがよく言われている…

読書メモ:Algorithms to Live By

Algorithms to Live By: The Computer Science of Human Decisions 作者: Brian Christian,Tom Griffiths 出版社/メーカー: Henry Holt and Co. 発売日: 2016/04/19 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る タイトルを素直に訳せば、「生活のなかの…

読書メモ:知るということ――認識学序説 渡辺慧(著)

知るということ 認識学序説 (ちくま学芸文庫) 作者: 渡辺慧 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2011/06/10 メディア: 文庫 クリック: 10回 この商品を含むブログ (1件) を見る 5年前にちくま学芸文庫から出されたこの本。 院生のときに読んでいたのだが、…

読書メモ:鏡映反転

鏡映反転――紀元前からの難問を解く 作者: 高野陽太郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/07/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る なぜ、鏡は左右だけを反転させるのか。 それだけについて書かれた本だという。 果たして、そんなテーマで1…