重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

神経科学

読書メモ:Nita Farahany ”The Battle for Our Brain” …ニューロテクノロジーの時代に守るべき「自由」とは

The Battle for Your Brain: Defending the Right to Think Freely in the Age of Neurotechnology (English Edition) 作者:Farahany, Nita A. St. Martin's Press Amazon 脳から情報をとる、脳に直接働きかける。5年前なら「未来の話」だったであろうニュー…

鑑賞メモ:映画『In Silico』――巨大科学プロジェクト10年の顛末と教訓

映画『In Silico』(2020年、映画サイト)を見た。一般公開はされていないため、権利者と契約を交わして「バーチャル上映会」を実施する形となった。知り合いに紹介したりソーシャルメディア等で募るなどして、数十人の方に視聴いただいた(2022年3月11~12…

読書メモ:精神を切る手術(橳島次郎 著)

精神を切る手術――脳に分け入る科学の歴史 作者:ぬで島 次郎 岩波書店 Amazon 生命倫理や科学政策を専門する著者による、2012年の単著。脳神経倫理では繰り返し言及される文献であり、いつか読まねばと思っていた。残念ながら絶版となっているのだが、今回意…

思考整理メモ:「受注」する脳 ~「発注モデル」から考える「AIの自律性」と脳の計算パラダイムの向こう側~

筆者が探究テーマとしている「神経科学の哲学」と「記憶の設計学」に関してあれこれ考えているなか、「発注」という概念が、一つのキーワードが浮かび上がってきました。以下は、そのスケッチ的なメモです。本記事で少しでも手ごたえが得られれば、徐々に肉…

読書メモ:NeuroScience Fiction(Rodrigo Quian Quiroga 著)

NeuroScience Fiction: From "2001: A Space Odyssey" to "Inception," How Neuroscience Is Transforming Sci-Fi into Reality—While Challenging Our Beliefs About ... and What Makes us Human (English Edition) 作者:Quian Quiroga, Rodrigo 発売日: 2…

読書メモ:意識の神秘を暴く(ファインバーグ&マラット 著、鈴木大地訳)…進化的起源から解明される意識の謎

意識の神秘を暴く: 脳と心の生命史 作者:ファインバーグ,トッド・E.,マラット,ジョン・M. 発売日: 2020/04/16 メディア: 単行本 『意識の神秘を暴く(Consciousness Demystified)』は、そのタイトルが示すとおり、 意識現象の科学的解明を目指した一冊であ…

読書メモ:デジタルで読む脳×紙の本で読む脳(メアリアン・ウルフ著、大田直子訳)

デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳 :「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる 作者:メアリアン・ウルフ 出版社/メーカー: インターシフト (合同出版) 発売日: 2020/02/06 メディア: 単行本 Reader, Come Home: The Reading Brain in a Digital World …

読書メモ:情動はこうしてつくられる(リサ・フェルドマン・バレット 著、高橋洋 訳)

情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論 作者: リサ・フェルドマン・バレット,高橋洋 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2019/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 情動(emotion)の研究を続けてきた心理学者・…

続・どうすれば脳を「理解」できるのか: 分かり方は一つじゃない~脳理解の多元主義へ~

文章:丸山隆一(@rmaruy) (注)本記事は鈴木力憲さんと書いた「どうすれば脳を「理解」できるのか:「コンピュータチップの神経科学」の続編ですが、本記事の筆者は丸山一人です。鈴木さんとの議論から多くのヒントを得ているものの、基本的には個人の考…

脳と機械をつないでいいのか? ~「BMIの倫理」の議論をもう一度始める~

先月、イーロン・マスク氏が率いるNeuralink社の発表が話題を呼びました。 これは、同社が開発した脳とコンピュータをつなぐ技術、いわゆるブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の最新の成果に関するものでした。細いファイバー状の電極を、ロボット技…

読書メモ:解離をめぐる2冊(柴田雅俊『解離性障害』、岡野憲一郎『解離新時代』)

解離性障害にまつわる本を二冊読んだ。 解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書) 作者: 柴山雅俊 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2007/09/01 メディア: 新書 購入: 6人 クリック: 48回 この商品を含むブログ (18件) を見る 解離新時代―…

どうすれば脳を「理解」できるのか:「コンピュータチップの神経科学」から考える

今回は「探求メモ」の特別版といった位置づけで、長めの記事を投稿します。2017年に出た神経科学についてのちょっと面白い論文を読み、友人と議論しながらあれこれ考えて書いたものです。昆虫の神経科学と合成生物学を研究をしている、鈴木力憲氏との共著で…

どんな問いが人を研究に駆り立てるのか(ケース:9年前の自分の場合)

私が常に興味があることに一つに、「研究者がどんなモチベーションで研究に向かっているのか」というのがある。何かの「専門」をもつ人と話すとき、「なぜその分野を選んだんですか?」と必ず聞いてしまう。相手がその道四十年の教授であっても、研究室に配…

読書メモ:Lost Connections(by Johann Hari)…うつ病は「つながりの病」である

Lost Connections: Why You're Depressed and How to Find Hope 作者: Johann Hari 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing PLC 発売日: 2018/01/11 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 「自分は決してうつ病にならない」と、自信をもっ…

読書メモ:Mind-Body Problems (by John Horgan)…心身問題はなぜ人生の問題になるのか?

Mind-Body Problems: Science, Subjectivity & Who We Really Are (English Edition) 作者: John Horgan 発売日: 2018/09/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『サイエンティフィック・アメリカン』誌のライターとして有名な、ジョン・ホーガ…

近刊紹介メモ:脳と時間(ディーン・ブオノマーノ 著、村上郁也 訳)…【編集担当による紹介文】

脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎 作者: ディーン・ブオノマーノ,村上郁也 出版社/メーカー: 森北出版 発売日: 2018/10/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ひょっとすると、来年から「サマータイム」が導入されるかもしれ…

探究メモ:脳科学は記憶の仕組みをどこまで解明したのか〈番外編2:論文紹介 Science 2018, Tanaka et al.〉

久しぶりの、「探求メモ:脳科学は記憶の仕組みをどこまで解明したのか」シリーズです。 過去の記事はこちら: 探究メモ:脳科学は記憶の仕組みをどこまで明らかにしたのか〈第8回(最終回):まとめ〉 - rmaruy_blog 探究メモ:脳科学は記憶の仕組みをどこ…

読書メモ(再掲): 心と体をゆたかにするマインドエクササイズの証明(ダニエル・ゴールマン&リチャード・デビッドソン著)

心と体をゆたかにするマインドエクササイズの証明 (フェニックスシリーズ) 作者: ダニエル・ゴールマン,リチャード・J・デビッドソン,藤田美菜子 出版社/メーカー: パンローリング株式会社 発売日: 2018/07/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を…

読書メモ:Altered Traits(Daniel Goleman & Richard Davidson)…「瞑想の脳科学」はどこまできたか

Altered Traits: Science Reveals How Meditation Changes Your Mind, Brain, and Body 作者: Daniel Goleman,Richard J. Davidson 出版社/メーカー: Avery 発売日: 2017/09/05 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 瞑想の科学的研究の第一…

読書メモ:脳の意識 機械の意識(渡辺正峰 著)

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書) 作者: 渡辺正峰 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/11/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る この本を書店でみて意外に思った。 ひところ意識の脳科学の翻訳本が固めて出され…

読書メモ:脳はいかにして意識をつくるのか(ゲオルク・ノルトフ 著、高橋洋 訳)

脳はいかに意識をつくるのか―脳の異常から心の謎に迫る 作者: ゲオルク・ノルトフ,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2016/11/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 原題は“Neuro-Philosophy and the Healthy Mind: Learning form t…

読書メモ:Behave(Robert Sapolsky著)

Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst 作者: Robert M. Sapolsky 出版社/メーカー: Penguin Press 発売日: 2017/05/02 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「なぜ私はどうでもいいことで怒ってしまうのか?」「あの人はなぜ浮気…

読書メモ(再掲):The Myth of Mirror Neurons (by Gregory Hickok)

The Myth of Mirror Neurons: The Real Neuroscience of Communication and Cognition 作者: Gregory, Ph.D. Hickok 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc 発売日: 2014/08/18 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る 2014年に読んだこの本。著…

読書メモ:〈わたし〉は脳に操られているのか (エリエザ―・スタンバーグ 著)

〈わたし〉は脳に操られているのか : 意識がアルゴリズムで解けないわけ 作者: エリエザー・スタンバーグ,大田直子 出版社/メーカー: インターシフト 発売日: 2016/09/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「自由意志」はあるのか、ないのか。 …

読書メモ:The Relativistic Brain (by M. Nicolelis & R. Cicurel)

The Relativistic Brain: How it works and why it cannot be simulated by a Turing machine (English Edition) 作者: Miguel Nicolelis,Ronald Cicurel 出版社/メーカー: Kios Press 発売日: 2015/04/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ブ…

読書メモ:Patient H.M. (by Luke Dittrich)

Patient H.M.: A Story of Memory, Madness, and Family Secrets 作者: Luke Dittrich 出版社/メーカー: Random House 発売日: 2016/08/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 患者H.M.と、彼に携わった科学者たちを描いたルポルタージュ。 言わ…

読書メモ:脳はいかに治癒をもたらすか(ノーマン・ドイジ)

脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線 作者: ノーマンドイジ,高橋洋 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2016/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 従来であれば「治らない」と診断されるような脳の病気が、嘘のように治っ…

読書メモ:脳がわかれば心がわかるか(山本貴光・吉川浩満)

脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座 (homo Viator) 作者: 山本貴光,吉川浩満 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/06/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 『心脳問題』(2004年)増補改訂版。旧版を読んでから2年…

読書メモ:性と愛の脳科学

性と愛の脳科学 新たな愛の物語 作者: ラリー・ヤング,ブライアン・アレグザンダー,坪子理美 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2015/12/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 世の中には、男の人と女の人がいる。 普段は当たり前だ…

読書メモ:マインドフル・ワーク

マインドフル・ワーク 「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える 作者: デイヴィッド・ゲレス 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2015/05/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「マインドフルネス」という言葉を本当によく聞くようになった。…