重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)

読書メモ、探究メモなど。

哲学

読書メモ:世界は時間でできている(平井靖史 著)

世界は時間でできている──ベルクソン時間哲学入門 作者:平井 靖史 青土社 Amazon 本書は、19~20世紀に活躍したフランスの哲学者アンリ・ベルクソンの時間哲学の全貌を、長年ベルクソン哲学の勢力的な研究を続け、日本だけでなく世界的な研究コミュニティづ…

読書メモ:記憶と人文学(三村尚央)…記憶の何が私/私たちにとって切実なのか

記憶と人文学: 忘却から身体・場所・もの語り、そして再構築へ 作者:三村尚央 小鳥遊書房 Amazon 実家にいたころ、私の母は、毎日欠かさず一行日記をつけていた。それが全部手元にあるので、「何年の何月何日は〇〇していたよ」などと瞬時に調べてみせるのだ…

思考整理メモ:「受注」する脳 ~「発注モデル」から考える「AIの自律性」と脳の計算パラダイムの向こう側~

筆者が探究テーマとしている「神経科学の哲学」と「記憶の設計学」に関してあれこれ考えているなか、「発注」という概念が、一つのキーワードが浮かび上がってきました。以下は、そのスケッチ的なメモです。本記事で少しでも手ごたえが得られれば、徐々に肉…

読書メモ:統計学を哲学する(大塚淳 著)

統計学を哲学する 作者:大塚 淳 発売日: 2020/10/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) 発売後すぐに入手し、夢中になって読んだ『統計学を哲学する』。とても大事な本だと感じ、Twitterで次のような(押しつけがましい)投稿もした。 大げさに聞こえるかも…

TENETメモ:『TENET』世界から生還するための「あら探し」

ネタバレは控えめですが、これから映画を楽しみたい人は読まないほうが良いかもしれません。

読書メモ:一人の科学ファンとして『ブルーノ・ラトゥールの取説』(久保明教)を読む

記:丸山隆一(@rmaruy) ブルーノ・ラトゥールの取説 (シリーズ〈哲学への扉〉) 作者:久保明教 発売日: 2019/08/09 メディア: 単行本 久保明教による『ブルーノ・ラトゥールの取説』(以下、『取説』)は、ブルーノ・ラトゥールという哲学者の著作について…

読書メモ:意識の神秘を暴く(ファインバーグ&マラット 著、鈴木大地訳)…進化的起源から解明される意識の謎

意識の神秘を暴く: 脳と心の生命史 作者:ファインバーグ,トッド・E.,マラット,ジョン・M. 発売日: 2020/04/16 メディア: 単行本 『意識の神秘を暴く(Consciousness Demystified)』は、そのタイトルが示すとおり、 意識現象の科学的解明を目指した一冊であ…

読書メモ:Galileo's Error (by Philip Goff)…なぜ意識の科学に「汎心論」が必要か

Galileo's Error: Foundations for a New Science of Consciousness 作者:Goff, Philip 発売日: 2019/11/07 メディア: ペーパーバック 心の哲学や意識の科学をフォローしていると、最近「汎心論」という言葉をよく聞く。心の哲学における汎心論とは、「意識…

精読メモ:『心にとって時間とは何か』(青山拓央 著)

以下は、青山拓央著『心にとって時間とは何か』の読書会(2020年2月6日開催、@下北沢ダーウィンルーム)用に作成した、読書メモです。 【注】本メモには、丸山個人の解釈が多分に含まれ、著者の意図を曲解している点も多数あるかもしれません。メモの内容に…

読書メモ:〈現実〉とは何か(西郷甲矢人・田口茂 著)…固着した探究から、自由な探究へ

〈現実〉とは何か (筑摩選書) 作者:西郷 甲矢人,田口 茂 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/12/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者は、数理物理学者の西郷甲矢人氏と、現象学者の田口茂氏。分野も世代も違う二人だが、あとがきによれば両者は9…

読書メモ:The Physicist & the Philosopher (by Jimena Canales)…アインシュタインとベルクソンは時間をめぐって何を争ったのか

The Physicist & the Philosopher: Einstein, Bergson, and the Debate That Changed Our Understanding of Time 作者:Jimena Canales 出版社/メーカー: Princeton Univ Pr 発売日: 2015/05/26 メディア: ハードカバー 科学史家ヒメナ・カナレス(Jimena Can…

読書メモ:心にとって時間とは何か(青山拓央 著)…性急で、たぶん蛇足な第一印象としての感想と称揚

心にとって時間とは何か (講談社現代新書) 作者:青山 拓央 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/12/11 メディア: 新書 待ちに待った、青山拓央先生の時間本が出た。出たのが今日だ。さっそく読んだ。読み終えて即、感想を書こうとしている。そのことに、後…

聴講メモ:『〈現在〉という謎』刊行記念 森田邦久×平井靖史トークイベント

2019年11月9日、代官山蔦屋書店にて、『〈現在〉という謎』刊行記念トークイベントが行われた。 企画したのは、勁草書房および蔦屋書店人文書コンシェルジュの宮台由美子氏。会場の雰囲気やトークの概要は、宮台さんの実況ツイートを見るとよくわかると思う…

物理学者と哲学者は「時間」を語ってどうすれ違うのか…『〈現在〉という謎』を読んで

〈現在〉という謎: 時間の空間化批判 作者: 森田邦久 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2019/09/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 物理学者と哲学者によるシンポジウムをもとに企画された論考集。各章では時間論、とくに「現在」の概念を巡…

読書メモ(勉強モード):Understanding Scientific Understanding(by Henk W. de Regt)~理解できないものを理解するために、まずは理解を理解する~

科学というのは、その成り立ちや動作原理が未知の対象――宇宙、生命、脳など――を「理解する」ための営みと言える。だが、ときに「科学的に理解するとはどういうことなのか」がわからなくなることがある。本ブログでは、一貫してそれについて考えてきた。 どう…

読書メモ:情動の哲学入門(信原幸弘 著)…世界はあらかじめエモいのか

情動の哲学入門: 価値・道徳・生きる意味 作者: 信原幸弘 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2017/11/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 最近、怒りっぽくなっている。家族からの何気ない一言にカッとなり、会社で投げかけられた自分…

読書メモ:哲学の誕生(納富信留 著)…無知の知から、不知の自覚へ

「無知の知」という言葉に、ずいぶん助けられてきたように思う。 私は、極度にものを知らない人間だ。ものごころついて以来、わけがわかったためしがない。25歳くらいまで、なぜか「バジル」と「しそ」が同じ野菜だと思っていた。小学生のころからお前の服装…

読書メモ(勉強モード):なぜ科学は多元的であるべきなのか(Hasok Chang, "Is Water H2O?", 第5章)

Is Water H2O?: Evidence, Realism and Pluralism (Boston Studies in the Philosophy and History of Science Book 293) (English Edition) 作者: Hasok Chang 出版社/メーカー: Springer 発売日: 2012/05/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件…

読書メモ(勉強モード):Mental Time Travel (by Kourken Michaelian)…記憶とは過去のシミュレーションである【後編】

Kourken Michaelian著、"Mental Time Travel"の読書メモの続き。 前編はこちら: 前半では、「エピソード記憶とは過去や未来の出来事の想像(=シミュレーション)の一種である」とする「シミュレーション説」が打ち立てられた。後半部では、 (過去の自分に…

読書メモ(勉強モード):Mental Time Travel (by Kourken Michaelian)…記憶とは過去のシミュレーションである【前編】

Mental Time Travel: Episodic Memory and Our Knowledge of the Personal Past (Life and Mind: Philosophical Issues in Biology and Psychology) (English Edition) 作者: Kourken Michaelian 出版社/メーカー: The MIT Press 発売日: 2016/02/19 メディ…

読書メモ(解説モード):水の電気分解の何が謎だったのか(Chang 2012, 第2章)

Is Water H2O?: Evidence, Realism and Pluralism (Boston Studies in the Philosophy and History of Science Book 293) (English Edition) 作者: Hasok Chang 出版社/メーカー: Springer 発売日: 2012/05/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件…

読書メモ:科学哲学の源流をたどる(伊勢田哲治 著)

科学哲学の源流をたどる:研究伝統の百年史 (叢書・知を究める) 作者: 伊勢田哲治 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房 発売日: 2018/11/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「伊勢田先生の新刊だ!」と思って買ったものの、「え、19世紀の歴史? …

視聴メモ:「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」…必要、ただし困ったときだけ(?)

先週の金曜日、下記のイベントが行われた。 伊勢田哲治×三中信宏 司会=山本貴光「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」@ゲンロンカフェ 2019年2月22日 科学哲学者の伊勢田哲治先生(以下、伊勢田氏)と、生物系統学を専門とする三中信宏先…

読書メモ:暇と退屈の倫理学 [増補新版](國分功一郎 著)…のふわっとした感想

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator) 作者: 國分功一郎 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2015/03/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (42件) を見る 初版が出たのが2011年。出版社を変えて新版が出たのが2015年。「暇と退屈」と「倫理学」と…

読書メモ:英米哲学入門(一ノ瀬正樹 著)

英米哲学入門 (ちくま新書) 作者: 一ノ瀬正樹 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/04/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 副題の『「である」と「べき」の交差する世界』に惹かれて買った。 「である」と「べき」の線引き問題につい…

読書メモ:勉強の哲学(千葉雅也 著)

勉強の哲学 来たるべきバカのために 作者: 千葉雅也 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2017/04/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (22件) を見る ずっと気になっていた本。2017年を代表するヒット本の一冊として評価されてきてい…

新刊紹介メモ:数学はなぜ哲学の問題になるのか(イアン・ハッキング著)

数学はなぜ哲学の問題になるのか 作者: イアン・ハッキング,金子洋之,大西琢朗 出版社/メーカー: 森北出版 発売日: 2017/10/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 仕事で関わった書籍です。 発売日に合わせ、ここでも紹介させてもらいます。 興味…

読書メモ:自然主義入門(植原亮 著)

自然主義入門: 知識・道徳・人間本性をめぐる現代哲学ツアー 作者: 植原亮 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2017/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 最近、科学と哲学の距離が近くなっているのだろうか。科学者と哲学者が合同開…

読書メモ:脳はいかにして意識をつくるのか(ゲオルク・ノルトフ 著、高橋洋 訳)

脳はいかに意識をつくるのか―脳の異常から心の謎に迫る 作者: ゲオルク・ノルトフ,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2016/11/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 原題は“Neuro-Philosophy and the Healthy Mind: Learning form t…

読書メモ:科学とモデル(マイケル・ワイスバーグ著、松王政浩訳)

科学とモデル―シミュレーションの哲学 入門― 作者: マイケル・ワイスバーグ,松王政浩 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2017/04/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 科学者は、ものごとを理解するのに「モデル」(数理モデル…