前々回、マウスの脳に「エングラム細胞」(=特定の記憶の保持を担う神経細胞群)を見つけたとする利根川ラボの研究を紹介しました。彼らは、エングラム細胞の操作を通じて「記憶を書きかえる」技術を実現しつつあると言います。しかし、こうした手法がすぐ…
少し間が空いてしまいましたが、もう少しだけ先へ進みたいと思います。 前回は、利根川進氏のチームが行った一連の研究を取り上げました。彼らは、「マウス海馬のニューロンのうち記憶に関わっているグループを標識して、強制的に活動させる技術」を開発しま…
げんきな日本論 (講談社現代新書) 作者: 橋爪大三郎,大澤真幸 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/10/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る 「日本論」とあるが「日本史」の本。 社会学者の橋爪大三郎さんと大澤真幸さんが、縄文時代から…
前回は、Eric Kandelによるアメフラシの研究を取り上げました。Kandel氏は、ミニマムな神経系をもつアメフラシを研究対象に選び、記憶の基本的メカニズムとしての「シナプス可塑性」について多くのことを明らかにしました。 1970年代以降、分子・細胞レベル…
前回は、「記憶の物理的実体(=エングラム)はシナプスにある」という考え方を紹介しました。それとともに、シナプスのレベルだけでなく、より小さな分子レベル、あるいはより大きな細胞集団のレベルなど、異なる階層ごとにエングラムを見出しうることも指…
※記憶の脳科学の話は一回お休みとします。平常運転の読書メモです。 現代思想 2017年3月臨時増刊号 総特集◎知のトップランナー50人の美しいセオリー 作者: 養老孟司,茂木健一郎,池田清彦,長谷川眞理子,渡辺政隆,長沼毅,山極寿一,佐藤文隆,黒川信重,円城塔,大…
前回は「エングラム」という概念を紹介しました。記憶の研究者たちは、一貫して、このエングラム、つまり脳の中の記憶の物理的実体を探してきました。 エングラムの所在についての「統一見解」 では、エングラムの所在について、現在の脳科学はどう考えてい…
前回はフォン・ノイマンの著作を取り上げ、彼が「脳の「記憶装置」は何か?」を問うたことを紹介しました。ノイマンはコンピュータから発想したので、「記憶装置」(原文だとおそらく単に“memory”=メモリ)という言い方をしていましたが、神経科学の本でよ…
見切り発車ぎみにスタートした本連載ですが、何はともあれ書いていきたいと思います。 前回の「第0回」では、やりたいことの概要を説明しました。あらためて、本連載を通して分かりたいのは次のようなことです。 「過去のエピソードなどをヒトの脳が記憶する…
このブログは、筆者が趣味で読んだ本(たいていは一般向けの科学書・哲学書)の感想を中心に、備忘録として書いているものです。 このあと数回の投稿では、特定の本の紹介ではなく、ある一つのテーマの文献をあれこれ調べ、自分なりに分かったことを書いてい…